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- 逢いたい、逢いたい、逢いたい
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愛してる と云う言葉ほど残酷な言葉はない。
その愛しさを含んだ言葉を囁かれてしまえば、その言葉が自分の心臓を巣くい根元の奥の奥まで潜り込んだまま居座ってしまう。
ふとした瞬間に本能を制して――否、本能を直接経て何かを訴えかけてくる。
その感情は、遠く離れた異国にいる相手でも、触れることさえ赦されない戦いの地であったとしても変わらず居座り続けるのだから余計性質が悪い。
もしかしたら状況が困難であればあるほどこの残酷な愛しさがますのではないだろうか。
―そこには『逢えない』という状況も含まれるのだろうか――
どうしてそんな話になったのかは最早思い出すこともできないし思い出す気もないが、
他の仲間があーたしかにとかどーゆーことっスか?いみわかんねーとか騒ぐ隣、
クラウドは一人上の空でその様なことを考えていた。
そこで小さな違和感を感じ取りそれが何か探り出せば、自分の頭を今し方横切っていった『逢えない』という言葉。
逢えない、とは一体どんな状況を自分は想定したのか。
セシルやフリオニール達のいう戦場のといったような酷く辛い状況となにが違うのだろうか。
そもそも自分は愛してる、などといった自分からは全く想像もできない言葉を言ったことないし、
少なくともこの世界では言われたこともないはずだ。
自分の世界の記憶は皆あやふやなものではあるが、女好きのジタンや既婚者であるセシルならともかく
己には似ても似付かない『愛してる』という言葉に思わず否定の感情が働く。
ピンとくるはずがない、自分には関係のない話なのだから。
「まぁでも大切な人に言われるならやっぱり嬉しいよな」
それが別れた彼女だったとしてもさーと呑気な声でバッツが呟いた。
「それでも逢えないときはどうすれば良いんだろうな」
「え?」
今までの会話では静かに口を閉ざしていたクラウドの発した声に仲間は驚いた。
しかし勢い良く溢れ出たそれを止める術を兵士は知らなかった。
「逢いたくて逢いたくて逢いたくて仕方ないのに、それでも逢えない相手が言ってくれた言葉だったらどうしたら良いんだろうな。」
普段の彼からは予想もつかないほど饒舌なその姿、困惑したのは仲間だけでなくクラウド自身もそうだった。
「もう二度と逢えない相手から言われた言葉だったら確かに厄介だな。一生捕らわれたままだ。」
果たしてそれが想像の話なのか彼自身の話なのか。
「忘れられるだろうか」
言い終わったのか我に帰ったクラウドの頬には赤味がさしていた。
「…意味の分からないことをいった。すまない、気にしないでくれ」
「忘れる必要はないと思うっスよ」
クラウドの発言を遮るように俯いたままそう言ったのはティーダだった。
「大切な人を忘れる必要なんかないっス」
深いマリンブルーがいつものように少し無邪気に、しかしどこか悲しみを含んだかのように強い視線を送った。
「うーん、確かに忘れる必要はないと思うよ」
ティーダの意見に肯定の意を見せたセシルは、メンバー内では体格がしっかりしている方なのにどこか女性的で柔らかい笑顔を見せた。
「もう二度と会えないからってその人を忘れなきゃいけない訳でもないしね。」
「クククククラウドにそそそんなに大切な人がいいいるのかはわからないが」
「のばら、動揺しすぎッス」
あははと周りの仲間たちに笑われてフリオニールはうるさい!!と一人赤面していた。
そしてコホンッとひと息ついてからとにかく、と話を続けた。
「どうしてもう二度と会えないと決めつけるんだ。それだけ想い合った相手だ、ひょんなことでまた出会えるかもしれないだろ?」
のばらと揶揄され真っ赤な薔薇が似合う彼はなるほど、確かに熱い瞳をもった男だとクラウドは関係のないことを考えていた。
「それに相手のレディーはクラウドのこと待ってくれてるかもしれないぜ?」
会えない間も、とおどけてみせたのはジタンで、黄金色の強い金髪を揺らしながら上目使いでクラウドにそう言った。
――クラウド。
誰が呼んだのだろうか。
鮮やかだがほのかに発光しているようにも思える色が頭をよぎり、透き通ったスカイブルーが目の前に広がった。
「そうか」
恐らくは元の世界でいつも見上げていた空なのだろう。
「俺は待っていてもいいのか」
無性に愛おしく感じるその青さは笑顔が零れるのに、クラウドはなぜだか泣きそうになった。
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大好きな某曲のある歌詞より。
ほんのりザックラになってしまた。
みんな忘れたくない忘れてほしくない人が居るんですって妄想。
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